医薬分業の担い手(薬剤師国家試験とその仕事を学ぶ)

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医薬分業の担い手

 今からおよそ30年ほど前まで、薬は医師からもらう“院内調剤”が当たり前でした。薬には“薬価差益”というものがあり、簡単に言うと、医師は患者さんに薬を使えば使うほど、利益があがったのです。しかしここ何年も、高齢化による医療費増に、日本を初めとする諸外国は悩み続けています。日本では平成11年度に医療費が30超億円を突破し、その後もどんどん増え続け、平成18年度にはおよそ33兆円にも上っています。まさに国が破綻してしまうような医療費の伸びです。

 こうした事態を解消するために取られた施策の1つが、薬の手を医師から離してしまおうという動きです。医師は病院に薬を置かずに、処方せんを発行するだけで、実際の薬は薬局で薬剤師から受け取る。こうすることで、薬価差益を見込んで無駄に薬が使用されることを防ごうというものです。

 もちろん、これには医師の強い反対がありました。歴史上、医師と薬剤師は処方せんの発行を巡って、長い間戦いを続けてきたのです。医薬分業が大きく飛躍することになったのが、昭和49年の処方せん発行料の大幅引き上げです。

簡単に言うと、薬価差益が得られない代わりに、医師は処方せんを病院の外に発行すると、処方せん料がもらえる仕組みになっていたのですが、この処方せん料が1枚につき100円から500円と5倍に上がったのです。

これにより政策誘導的に、医薬分業は爆発的に進むことになります。今ではこの昭和49年は、“分業元年”とよばれています。

 さらに医療費の問題だけではなく、薬を安全に使うためにも“医薬分業”は有効です。医薬分業の発祥地であるヨーロッパでは、そもそも身分の高い人が、宮中で医師による毒殺を防ぐために、実際に診察をする医師と薬を渡す薬剤師を別の職業として分離したのが始まりです。

 ここ数十年で日本でも、医師が処方した薬を薬剤師が、本当にその患者さんにあっているか、正しい用量か、他の薬と相互作用がないかなどを確認して調剤する“医薬分業”が主流になってきています。

 全国の医療機関から発行される処方せんのうち、およそ6割が病院の外の保険薬局で調剤されており、薬を薬局でもらうのが当たり前の時代がやってきています。100%の処方せんが院外処方せんとなるのも、遠い将来ではないかもしれません。   

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